Vol.11 No.10
【特 集】 社会実装が進むAI農業(供


データ駆動型農業を支えるWAGRIデータ・プログラムと
農家向けサービス事例の紹介
農研機構 農業情報研究センター     川村 隆浩・塩見 岳博・安藤 隆朗・
和田 光博・寺元 郁博・斎藤 岳士・
二宮 芳継・鶴 薫
農研機構 基盤技術研究本部
    照井 芳
 昨今,データ駆動型農業が世界的に注目されている。農研機構が運営する WAGRI は営農活動のさまざまな場面で農家がデータを活用することを支援するため,気象や土壌,市況といった農業関連データや,それを用いた稲・麦・大豆・野菜の生育収量予測プログラム,病虫害判別プログラムなどを提供するインターネットサイトである。本稿では,まず2023年時点でWAGRI から提供している最新のデータやプログラムを紹介し,次にそれらを活用して実際に民間企業が農家向けに提供しているサービスをいくつか紹介する。最後に WAGRI の自立運営に向けた今後の取り組みについて述べる。
(キーワード:スマート農業,農業DX,デジタル農業,AI,API,WAGRI)
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AIを活用した土壌病害診断技術の開発
農研機構 植物防疫研究部門    吉田 重信
 難防除で多大な経済的被害を招く土壌伝染性病害(土壌病害)を効率的に管理するためには,圃場単位で栽培前に「土壌病害の発生しやすさ(発病ポテンシャル)」の程度を診断・評価し,発病ポテンシャルの程度に応じた対策手段を講じる病害管理法(ヘソディム)の実践が有効である。筆者らは多くの圃場でヘソディムを実践してもらうために,圃場の発病ポテンシャルをAI(人工知能)で診断し,診断結果に応じた対策法を示すアプリ「HeSo+(ヘソプラス)」を公設試験研究機関,民間企業および大学と共同で開発した。HeSo+の活用により,効率的な土壌病害管理の普及が期待できる。
(キーワード:AI,人工知能,土壌病害,ヘソディム,HeSo+)
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ポテトハーベスタに搭載可能なAIを活用した土塊・(れき)除去装置の開発
東洋農機株式会社     船引 邦弘
 バレイショ収穫では多くの作業員が必要であるが,近年は人手不足により集められない状況である。そこで,バレイショ収穫の省力化,省人化に向け,ポテトハーベスタに搭載可能なAI を活用した土塊・礫除去装置の開発を行った。フラップのずれや可動させる本数の改良,コンベヤの改良を行い,圃場で行った試験では土塊,礫の除去率は平均56.4%,バレイショの誤選別率は平均2.0%であった。社会実装に向けてはさらなる改良が必要ではあるが,ポテトハーベスタに搭載可能な除去装置のプロトタイプを示すことができた。
(キーワード:バレイショ収穫,ポテトハーベスタ,土塊・礫除去装置,AI,ディープラーニング)
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ウンシュウミカン糖度予測AIの開発と実証
農研機構 農業情報研究センター    森岡 涼子
 農研機構は農林水産省のスマート農業技術の開発・実証プロジェクトにおいてAI(人工知能)を用いてウンシュウミカンの糖度を予測するシステムを開発した。産地で蓄積した過去の糖度データと各生産地点の気象データを利用して,出荷の3カ月から6カ月前の時点で出荷時の糖度を予測するソフトウェアである。産地で従来から使われてきた糖度予測法は,予測誤差の平均が糖度1度前後であったのに対し,機械学習と気象予測技術を使った糖度予測AI では誤差を約半分にすることができた。実用上特に晩生系統で課題となっていた予測時期の早期化については,生産地点にて生育初期の糖度測定が実施されているよりも前から高精度の予測値が提供できることを実現した。本稿ではこの予測技術の開発の背景と予測法,産地での活用について紹介する。
(キーワード:ウンシュウミカン,糖度予測,AI,ニューラルネットワーク,非破壊測定)
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深層学習による物体検出を利用したイネウンカ類自動カウントシステムの開発
農研機構 九州沖縄農業研究センター 兼 農業情報研究センター    高山 智光
 イネウンカ類の発生調査は,3種それぞれの発育ステージ,雌雄,翅型(はねがた)を見分けながらカウントするため,熟練した専門家であっても多大な労力を必要とする。このため,深層学習による物体検出により90%以上の精度でイネウンカ類のみを見分けるAI を開発した。このAI を組み込んだ自動カウントシステムでは,調査用粘着板に捕獲したイネウンカ類を画像化し,AI で認識,計数を5分以内で完了する。
(キーワード:イネウンカ類,発生調査,人工知能,深層学習,物体検出)
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衛星画像とAI解析を誰もが簡単に活用できる時代のスマート農業
―ザルビオ®フィールドマネージャー―
BASFジャパン株式会社    五味 剛史
 衛星画像とAI 解析に基づくザルビオ®フィールドマネージャーを活用して,スマート農業が誰でも簡単に活用できるようになり,生産者は可変施肥による収量増加,生産コスト削減に取り組んでいる。また,農業生産の現場では予測解析に基づく農薬散布や水管理の最適化を行うことで生産性を向上させる動きが加速している。このように,近年の異常気象で生育予測が難しく,病害リスクが高まる中,ザルビオ®フィールドマネージャーは生産者に必要不可欠な,世界最先端のテクノロジーを提供している。
(キーワード:スマート農業,生産性向上,持続可能な農業,可変施肥,収量増,生産コスト削減)
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