Vol.11 No.3
【特 集】 第23回民間部門農林水産研究開発功績者表彰受賞者の業績


スケソウダラのロコモーション改善機能性研究ならびに社会実装
株式会社ニッスイ 食品機能科学研究所     内田 健志・吉田 恵里子・
赤松 裕訓・柳本 賢一・杉山 公教
 筋肉増加には,「充分なたんぱく質摂取」と「強度な運動」が必要であるが,著者らの研究からは,スケソウダラの速筋タンパク(以下,APP)摂取により,「強度な運動」に類似した作用が筋肉内で起きることや,その結果,筋肉(特に速筋)を増加させることを見出した。また,健常者(若齢〜高齢者),要支援・要介護認定者を対象としたヒト試験で,APP 4.5g/日 の摂取により筋肉や筋力の増加を示した。これらの情報は,日本の健康対策に対する方針(フレイル予防など)やタンパク質ブームなどもリンクしていたことから,メディアのニーズにも合致し,多数のメディア掲載に至るとともに,練り製品市場の活性化に繋がった。さらに,その概念は,多数の商品設計に活用し,速筋タンパクシリーズの展開が開始された。
(キーワード:フレイル,ロコモ,健康寿命,筋力,加齢)
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天敵快適住居バンカーシート開発・普及の経緯と最近の成果"ハダニ
ピークのないイチゴ栽培を目指したイチゴハダニゼロプロジェクト"
全国農業協同組合連合会
(元 石原バイオサイエンス株式会社)
        中島 哲男
 バンカーシートは天敵の隠れ場所,産卵場所を提供するために開発された資材である。ミヤコバンカーは野菜,花き,果樹類のハダニの防除に,スワルバンカーロングは施設栽培野菜,花き,果樹類のアザミウマ,コナジラミ,ホコリダニの防除に使用される。本報告では,バンカーシートの開発,普及の経緯と現在JA全農を中心に進めているハダニピークのないイチゴ栽培を目指して,ダニ剤,気門封鎖剤,天敵などを組み合わせたIPMプログラムの確立のため,化学農薬メーカーを含めた"イチゴハダニゼロプロジェクト"の成果についても報告する。その成果として,ミヤコバンカー放飼時にハダニ密度をゼロにできるかは育苗期の薬剤散布の良否が大きく関係している(散布水量,散布圧)。ダニ剤に気門封鎖剤を加用するとハダニ防除効果が改善する。サフオイル乳剤に湿展性の高い展着剤を加用することで,薬害リスクは大きく減少する。ミヤコバンカー放飼前1週間以内にダニオーテフロアブルを散布するとミヤコバンカーのゼロ放飼実現の確率が上がるということが分かった。
(キーワード:バンカーシート,ミヤコバンカー,スワルバンカーロング,ダニ剤,気門封鎖剤)
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Plant-Based Food「ソイレブール」の開発
不二製油株式会社    唐谷 直宏
 当社で新たに開発したPlant-Based Food「ソイレブール」は,当社独自素材である「豆乳クリーム」を主要原料とした,バターとは全く異なるおいしさを表現した新規油脂素材である。直食用途においては,ソイレブールを構成する油脂はバターよりも低い温度で溶ける。そのため,口に入れた後の溶け方が速い。また,豆乳クリームのコクとクリーミー感も感じながら,合わせる素材の味を引き立てる。練り込み用途においては,パンをしっとりやわらかい食感にすることができる。2022年現在,油脂メーカー各社がPBFブランドを立ち上げ,新製品を続々と上市しており,今後も国内市場は活性化していくと推測される。
(キーワード:Plant-Based Food,代替食品,バター,豆乳,油中水型乳化物)
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TMR利用型酪農における生産プロセス一元管理システムの普及
計根別農業協同組合         川目 剛
北海道イシダ株式会社         小西 昭彦
エゾウィン株式会社         大野 宏
 飼料生産の作業車両の位置やバンカーサイロの踏圧状態がリアルタイムにモニタリングできる「レポサク」,TMR(完全混合飼料)配合において設定量が自動排出される飼料タンクの「シャッター自動開閉装置」を開発した。作業の「見える化」で車両の効率的配置や良質なサイレージ生産ができると同時に,シャッターの自動開閉でTMR製造時間の短縮や飼料設計通りのTMR製造が可能になった。さらに,サイレージの生産履歴・成分情報と搾乳ロボットデータを紐付けできる「生産プロセス一元管理システム」の開発により,各構成員はこれらの情報を共有し比較検討することで生乳生産工程の改善を図ることが可能となった。一連のシステム導入により,TMR製造経費の6%削減および構成酪農家の乳量増加と経営向上につながった。
(キーワード:レポサク,シャッター自動開閉装置,生産プロセス一元化システム,生産履歴,生産工程)
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簡易抽出試料を用いた豚熱・アフリカ豚熱の同時迅速検査法の開発
タカラバイオ株式会社     名倉 有一・垂井 智子・吉崎 美和・
田上 潤・中筋 愛・仲尾 功一
 現在,豚熱(CSF)については国内での感染拡大の抑制が,またアフリカ豚熱(ASF)については近隣国からの侵入阻止が我が国の養豚業における最重要課題となっている。CSFとASFはともに家畜伝染病予防法に定められる伝染病であり,互いに臨床症状が酷似するため,防疫対策上,両者の正確な診断と識別が求められている。特に野生イノシシにおけるCSFの流行により現場での検査数が増加し,検査に従事する家畜防疫員の負担が増している。このような負担の軽減と防疫対策の効率化を目的として,タカラバイオ(株)ではCSFウイルスおよびASFウイルス遺伝子の同時検出法を開発し,2021年11月に検出試薬を発売した。
(キーワード:豚熱,アフリカ豚熱,家畜伝染病予防法,遺伝子検査,PCR,同時検出)
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電気刺激を利用した活魚取り扱いシステムの開発とその普及
ニチモウ株式会社         伊藤 翔
西日本ニチモウ株式会社         池田 怜史
株式会社末松電子製作所         槌山 靖彦
 養殖魚や漁獲した魚を空中に取り上げたときに活用可能な,電気刺激により活魚の激動を抑制するシステムを開発した。このシステムの効果は,活け締め(脱血)処理や出荷作業に従事される人の労務負荷を低減することであり,水産業における働き手不足への対策となる。加えて,対象魚の品質低下を抑制してその価値,魚価を高めることが期待できる。現在は,ぶり類・さけ類・マダイなどの養殖業や,定置網などの漁業を中心に普及し始めている。
(キーワード:水産業,魚の鎮静化,省力化,高付加価値化,魚の動物福祉)
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