Vol.10 No.11
【特 集】 スマート農業技術の現地実証と社会実装(供


スマート農業実証プロジェクトの概要と本特集のねらい
農研機構 企画戦略本部 研究統括部    栗原 光規
 スマート農業実証プロジェクトは,これまでに205課題が全国各地で展開されている。そのうち2020年から2年間の計画で取り組まれた55課題(水田作11,畑作7,露地野菜12,花き2,施設園芸6,果樹8,茶1,畜産5,ローカル5Gが3(水田作1,果樹1,茶1))が終了したため,そのうち特徴的な10課題を選定し,その取り組み概要,導入技術の効果と課題,今後の社会実装に向けた取り組みについて紹介する。
(キーワード:スマート農業,実証プロジェクト,省力化,軽労化,中山間)
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中山間地域における水稲スマート有機栽培体系の実証
福島県農業総合センター     岡崎 徹哉
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で栽培面積が減少した福島県浜通りの水稲有機栽培の復興再生に向け,労力の軽減と収量および品質の安定化を目指し,スマート農業機器を活用した中山間地域での水稲有機栽培体系の実証を行った。その結果,非熟練者であっても作業精度が向上することで精神的な疲労を軽減できるとともに,水管理や畦畔除草作業では作業時間の削減による肉体的な疲労を軽減できた。さらに,ほ場画像解析や収量データを基にした肥培管理により,生育の均一化,ほ場雑草量の見える化が可能となった。
(キーワード:中山間地域,スマート,水稲,有機栽培,省力化)
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超大規模経営におけるスマート農業技術を活用した生産効率化への取り組み
農研機構 東北農業研究センター 緩傾斜畑作研究領域    宮路 広武
 北上市中山間地域スマート農業実証コンソーシアムでは,わが国最大級の農業生産法人である株式会社西部開発農産を実証経営体として生産管理システムやセンシング技術の活用などに取り組んできた。結果として,トラクタの稼働情報など経営改善に必要な各種営農データの取得が可能となった。また,センシング技術を活用したダイズの排水対策では,収量向上を実現することができた。しかし,取得された営農データの効率的な集計・分析手法の提示や排水対策技術の効果の詳細な解明については今後の課題である。
(キーワード:超大規模経営,生産管理システム,センシング技術,営農データ)
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さつまいも生産に対するスマート農業一貫体系の導入による
「超省力化・規模拡大」と「単収増加・高品化」の実証
株式会社ロボネット・コミュニケーションズ    横山 貴久
 2020年から2年間,JA鹿児島きもつき,実証農家4者および当社・地方自治体・大学などでコンソーシアムを構成し,スマート農業実証プロジェクトを行った。このプロジェクトでは,さつまいも生産に対するスマート農業一貫体系(スマート育苗体系,スマート植え付け体系,ドローンによる空撮・防除,環境計測情報の取得,営農情報入力)の導入による「超省力化・規模拡大」と「単収増加・高品化」の実証を行い,目標としていた20%の省力化と10%の単収増加を達成した。
(キーワード:さつまいも,スマート農業,超省力化,規模拡大,単収増加,高品質化)
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カボチャのスマート栽培・収穫の実証
農研機構 北海道農業研究センター 研究推進部    杉戸 智子
 北海道はカボチャの一大産地であるが,作付面積,収穫量ともに減少している。融雪後から定植までの短期間に行う農作業が多いことや,農家1戸当たりの耕地面積の拡大・担い手の高齢化により,労力を要するカボチャ栽培が敬遠されているためと考えられる。そこで,①自動苗かん水装置,②ロボットトラクタと有人トラクタの協調作業,③ドローンを用いた農薬散布と部分追肥,ぜ穫作業支援機(試作機)を導入し ,効果を検証した。その結果,作業時間削減や収量増加,労働負荷軽減などの効果が認められた。
(キーワード:自動苗かん水装置, ロボットトラクタ, ドローン散布, 部分追肥, 収穫支援機)
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小規模野菜産地における持続可能なスマート農業の確立
浜松市 産業部 農林水産課    松尾 和弥
 就農者数の減少とそれに伴う農家当たりの経営面積の拡大要請は全国的に大きな課題となっているが,中山間地の農業現場は小区画の条件不利地が多く,既存の農業機械では経営規模の拡大が困難であった。そこで,本プロジェクトでは中山間地に所在する小規模経営体にて,スマート農業技術による経営改善に取り組んだ。直進アシストトラクタ,ドローンなどのスマート農機を導入した結果,労働時間削減,作付面積拡大,反収増などの効果を確認できた。収益面でもシェアリングなどによりスマート農機の稼働率を高めることで,小規模経営体であっても採算可能な水準でスマート農機を導入できることを確認した。
(キーワード:スマート農業,中山間地域,シェアリング,省力化,採算)
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直売イチゴ経営におけるスマート農業技術を活用した
データ駆動型高収益経営体系の実証
茨城県農業総合研究センター 園芸研究所     本間 貴司
 中山間地における直売型のイチゴ経営体を実証農場とし,スマート農業技術を活用した高収益経営体系の実証試験を行った。導入技術は現地の実情に合わせ,中小規模のパイプハウスと親和性の高い自動環境制御と,AIを利用した養液土耕装置を導入し,生産性の向上と作業時間削減を実証した。また,直売型経営体ならではの技術として,販売先である直売所の需要量予測技術を活用し,適切な販売先の選択による収益性の向上を実証した。さらに,作業負荷の高いイチゴの管理作業において,アシストスーツを活用した疲労と作業時間削減を実証した。
(キーワード:直売イチゴ経営, 自動環境制御, 需要量予測, アシストスーツ, 作業時間削減)
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オーダーメイド型高品質トマトの計画生産および情報の集約・可視化・共有と自動化による中規模経営体における高度な企業的農業経営の実現
ベルファーム株式会社    斎藤 浩一
農研機構 野菜花き研究部門    筧 雄介
 本事業では,顧客ニーズに応じた高品質トマトを低段栽培で計画生産し,栽培環境,果実品質および労務データの集約・可視化と定量情報に基づくPDCAの実現による生産性向上および高負荷作業の自動化で労務費を削減することを目指した。PDCA開始後1年間の結果として売上が4.2%向上。さらなる向上を目指している。労務費を2020年度比で18.8%削減した。詳細はベルファーム(株)ホームページ上で紹介動画と共に公開している。
(キーワード:計画生産,統合情報プラットフォーム,施設園芸,環境制御,トマト)
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温州みかん生産におけるスマート農業技術の導入効果の実証
静岡県経済産業部 農業局    濱崎 櫻
 静岡県の温州みかん産地では,生産力を維持・強化していくために中核農家の規模拡大を図る必要があり,作業の省力化や軽労化が求められている。そこで,2020年から2年間,静岡県スマートみかん実証コンソーシアムで,みかん経営におけるスマート農業技術体系の実証試験を行った。その結果,遠隔制御除草機の導入による除草作業時間の大幅な削減や,除草剤散布や施肥,収穫運搬作業での運搬補助ロボットの利用による省力化や軽労化,共同選果場でのAI選果機稼働による家庭選果時間の削減などの効果が明らかとなった。
(キーワード:スマート農業,温州みかん,省力化,ロボット,AI選果機)
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加温ぶどう栽培におけるスマート農業技術の実証
出雲市 農林水産部    陰山 真樹
 出雲市は,国内最大級の加温ぶどう産地であるが,栽培面積の減少が続き,市場からの要求に応えきれない状況となっている。このような中,既存生産者の規模拡大や新たな担い手の確保が可能な産地への発展を図るため,従前のハウス管理を省力化する技術実証および「匠の技術」の伝承に向けたスマート農業の実証を行った。特に,ハウスの自動換気により適切な温度管理が行われたことで,出荷時期が早まり単価が向上した。さらに温度管理に係る労働時間も大幅に削減でき,こうした労働時間で栽培管理をより丁寧に行うことで品質が向上し,所得の向上につながった。今回の実証結果は,出雲の産地再興に向けた第一歩となったと考えている。
(キーワード:加温ぶどう栽培,自動換気・養液土耕システム,VR学習システム,技術伝承)
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スマート農業技術を活用した広大な中山間地における放牧牛監視システムの実証
熊本県農業研究センター 草地畜産研究所     吉田 大志
 熊本県阿蘇地域では,広大な草地を活用して牛の放牧が行われてきたが,放牧牛の監視作業には多大な労力を要している。そこでスマート農業技術を導入し,放牧地内の通信環境の整備やBLE通信を用いて放牧牛の監視作業の軽労化を目指した結果,144ha放牧地の約57%を広域Wi-Fi化し,さらには監視作業時間を約61%削減することができた。
(キーワード:中山間地,放牧牛監視,省力化,広域Wi-Fi化,BLE通信)
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