Vol.32No.6
【特 集】 省資源にむけた新肥料資材の開発


リン資源の動向と代替資材活用の可能性
元 中央農業総合研究センター    原田 靖生
 わが国は,肥料・肥料原料としてリン鉱石やリン安を全て輸入に頼っているが(PO:約60万t), リン鉱石産出国の自国優先策や世界の食料増産により価格が高騰している。家畜排泄物や下水汚泥など,わが国で発生する全ての有機性廃棄物中に含まれるリンの総量は輸入量とほぼ等しいと推定されるが, そのうち回収・活用可能な量は限られ,輸入リンの多くを代替することは現実的でない。 補完的な代替にとどまるが,ブロイラーふんの焼却灰や下水汚泥焼却灰については技術的にほぼ完成しており,部分的にでも条件の整ったところから実用化に着手すべきであろう。
(キーワード:リン鉱石,リン収支,リン回収技術,鶏ふん燃焼灰,下水汚泥焼却灰)
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肥料代替資材としての家畜ふん堆肥の活用技術
新潟県農業総合研究所畜産研究センター 生産・環境科    小柳 渉
岐阜県農業技術センター 環境部    棚橋 寿彦
 肥料高騰の中,家畜ふん堆肥がもつ高い肥料成分に注目が集まっている。しかし,家畜ふん堆肥は畜種・製造法により成分量およびその肥効(窒素)がばらつくという特徴がある。 そのため,個々の堆肥について有効成分施用量を把握して,相当量の化学肥料を減肥することが,家畜ふん堆肥の肥料的利用のポイントとなる。 本稿では,家畜ふん堆肥中窒素,リン酸,カリの評価法ならびにそれぞれの特性を生かした肥料的利用法について著者らが開発した手法を中心に紹介する。
(キーワード:家畜ふん堆肥,窒素,リン酸,カリ)
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高窒素鶏ふん肥料の製造
三重県農業研究所 循環機能開発研究課    村上 圭一
 肥料高騰を背景に家畜ふん堆肥の重要性が見直されつつある。鶏ふん堆肥は,従来から速効性の窒素質肥料として利用されているものの,その肥効に安定感がないと敬遠される場合も少なくない。 高窒素鶏ふん肥料は,このような問題点を改善するため,鶏ふんに含まれる尿酸態窒素を完全に制御することで,全窒素含有量5.5%以上を可能とする肥料化製造法により誕生する。 本製造法は,耕種農家のニーズに適合する最新技術として全国で注目を集めている。
(キーワード:鶏ふん,尿酸,高窒素)
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生ごみから容易に製造できる低成分型リサイクル肥料
東京農業大学 応用生物科学部    稲垣 開生・後藤 逸男
 生ごみを加熱乾燥し,少量の尿素を添加する,あるいは搾油処理後に成型加工すると,都会の中でもわずか数時間で,窒素主体の低成分型生ごみ肥料が容易に製造できる。 本肥料は既存の有機質肥料と同等の肥効を示し,農産物の品質向上にも寄与する。 また,可給態リン酸が過剰の畑やハウスで連用することで、生育・収量・品質を低下させることなく,土壌中の可給態リン酸を軽減できる。
(キーワード:生ごみ,食品廃棄物,食品リサイクル,低成分肥料,有機質肥料)
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下水汚泥焼却灰からのリン回収技術
メタウオーター株式会社 事業開発本部事業企画部    守屋 由介
 わが国の下水道には,生活排水などに由来する大量のリンが流入している。 さらに水質保全を目的とした高度処理の普及に伴い,下水汚泥焼却灰には高濃度のリンが濃縮されており,数少ない国内リン資源として近年注目を集めつつある。 本稿では,肥料の安定供給に資することを目的とした場合,下水道システムの中でも特に汚泥焼却灰からリンを回収することが有効であることを示す。 また,そのような背景から岐阜市と共同で開発したアルカリ抽出法による下水汚泥焼却灰からのリン回収技術に関する技術的な概要,および,そこから得られるリン資源の利用に関する現状と展望について紹介する。
(キーワード:焼却灰,リン回収,アルカリ抽出法)
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土壌微生物の機能を活用した土壌蓄積リンの有効利用技術
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター    唐澤 敏彦
 施肥したリンの作物による利用率は低く,農耕地の土壌には,多くの肥料由来のリンが蓄積している。その大部分は,植物が吸収・利用しにくい難溶性の無機態リンや有機態のリンであるとされる。 一方,土壌中には,難溶性の無機態リンを溶解する能力,有機態リンを無機化する能力,低濃度のリンを広範囲から収集して植物に供給する能力などをもつ様々な微生物が生息しており, その利用により作物に土壌蓄積リンを供給できるようになる可能性がある。 ここでは,VA菌根菌,リン溶解菌などのリンの循環に関わる微生物や土壌生物が生成する酵素などを活用して土壌蓄積リンを作物に効率よく供給し,リンの減肥につなげようとする技術開発を紹介する。
(キーワード:土壌蓄積リン,VA菌根菌,リン溶解菌,ホスファターゼ,バイオマスリン)
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メタン発酵消化液の液肥としての利用法
酪農学園大学 酪農学部酪農学科    松中 照夫
 家畜ふん尿などを原料に,嫌気的条件でメタン発酵処理したものが消化液である。有機物が発酵過程で分解されるため,消化液は液肥の様相を呈し流動性が大きい。 消化液はほとんど悪臭がなく,原料ふん尿に含まれた肥料養分はそのまま消化液へ移行する。消化液中養分のうち,窒素,リン,カリウムは化学肥料へ換算することで肥効評価できる。 草地への施与は,前年秋と早春に等量分施するのが最も効果的である。飼料用トウモロコシ畑への消化液の前年秋施与は避け,当年春の播種前の施与が望ましい。 消化液は流動性が大きいため,施与された消化液が畑地の微地形や凹凸などに応じて移動しやすい。それゆえ,裸地状態の畑地に消化液を均一施与するのは難しい。
(キーワード:ふん尿,メタン発酵,消化液,草地,トウモロコシ)
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省資源をめざした肥料削減の可能性
(独)農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター    加藤 直人
 施設栽培を中心に土壌養分の過剰蓄積が進むなかで,昨年は肥料価格が高騰した。 国内有機性資源の利用や施肥の適正化により,省資源型施肥を実現し,短期的には肥料コストの節減,長期的には資源保護と環境保全,土壌の健全化を図る必要がある。 ここでは,家畜ふん堆肥の製造・利用法,土壌診断に基づく減肥,ならびに効率的なリン酸施肥技術について,これまでの知見や技術開発の状況を紹介し,優先して取り組むべき今後の研究方向を考察した。
(キーワード:省資源,家畜ふん堆肥,土壌診断,リン酸施肥)
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