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イラガ

Monema flavescens


イラガの終齢幼虫

 イラガ科。日本全国に分布。庭にいる有毒の毛虫としては、ドクガの仲間と並んで刺されることの多い毛虫です。イラガの仲間の幼虫は英語でスラッグ・キャタピラー (ナメクジいも虫)といい、脚がほとんどなく、ナメクジのように腹面全体で這い回ります。いろいろな種類がありますが、とくに庭で多く見られるのが本種と次のクロシタアオイラガです。 イラガの幼虫は成長すると体長が25mmくらいで、小ぶりながら、写真のようにからだに多くのトゲを持った肉質の突起があり、まるで武装した戦車のようです。 このトゲは中空で体内の毒腺につながっていて、刺すと同時に相手に毒液を注射します。

 ドクガの仲間は毒針毛の毒物質による“かゆい毛虫”の代表ですが、イラガの仲間は毒液の注入による“痛い毛虫”の代表で、刺されると、 電撃的な痛みが走ります。刺すのは幼虫だけで、成虫などは無毒で、また、刺されたあともドクガの仲間よりは回復が早いのですが、刺された瞬間の痛みは二度と忘れられないほどです。 イラガの幼虫はいろいろの樹木の葉を食べますが、とくによく見られるのはカキ・サクラ・ウメ・アンズ・ケヤキ・カエデ類・ヤナギ類・クリ・クルミ・ザクロなどです。

 通常年1回の発生ですが2回発生することもあります。幼虫は7〜8月から10月ころにわたって見られます。 よく木の幹や枝に暗白色に褐色の縞模様のある写真のようなものがついていますが、これがイラガのマユです。

イラガのマユ

 このなかで終齢幼虫で越冬し、春にそのままサナギになります。 このマユはとても固く、スズメノショウベンタゴ、スズメノテッポウなどと呼ばれ、 また“玉虫”の名で中の幼虫が釣り餌として利用されています。マユの中の終齢幼虫は白く形が変わり、トゲも柔らかく変形してもう人を刺すことはありません。

 刺されたときの治療法としては抗ヒスタミン含有のステロイド軟膏を塗るのが効果があります。


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