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プリムラの仲間

プリムラ属(Primula

*プリムラのプロフィール    *プリムラコレクション


各写真をクリックすると大きな写真をご覧になれます。

プリムラのプロフィール

 春の訪れを告げる花、プリムラ。プリムラ属は、サクラソウ科の草本で、約400種も分類される大家族です。
 分布は広く、北半球、エチオピア、ジャワ、ニューギニア、南アメリカの南部に自生地があり、ほとんどがアルパインフラワーです。 もちろん、日本原産の種はサクラソウを代表として14種あります。

 プリムラは英語では「primula」または「primrose」で、「primula」は、 「春一番の花」という意味の「prima verola」が短くなったもので、「primrose」は、primeが最初の、 roseがバラに由来していると思われがちですが、古い英語の「初めての児」という意味の「primerole」に由来しているそうです。 イタリア語、スペイン語、ロシア語も同じ由来ですが、ドイツ語だけは、「schlusselblume」という「鍵の花」 (「schlussel」は「鍵」、「blume」は「花」)ということに由来します。これには、次のような伝説があります。 それは、病気の母を持つ少女が妖精に教えられて城の門の鍵にプリムラをさしこむと城の中には宝物がたくさんあって母にプレゼントし、病気も治ったという伝説です。

サクラソウとアネモネの花束  イギリスでは、サクラソウは魔女を防ぐ効果があると言われていて、復活祭には教会に飾るという古い習慣があり、 またスコットランドではサクラソウとアネモネの花束を作る習慣があるとのことです。そのことで思い出されるのは、 私が以前4月初旬にイギリスのファーム・ハウス(農家民宿)に泊まった時のことです。通されたのは、アンティークな家具に囲まれたすてきな部屋でした。 その窓辺にまさに朝摘んできたような野の花が小さな陶器の花瓶に活けててありました。花は、写真のようにプリムラとアネモネです。 その時、私は、今まで見た中で一番かわいい花束だと、ただ奥様の心温まる持てなしに感動しました。しかし、丁度復活祭の頃でしたので、魔女除けという意味があったのです。 そのようないわれがあることを数年後になって初めて知りました。

 プリムラといえば、ジュリア、マラコイデス、オブコニカなどに馴染みがあると思いますが、ここでは、控えめで初々しくて妖精のような可憐な原種のプリムラ、 または高貴な魅力を持ったプリムラなど、違う魅力をもったプリムラを紹介したいと思います。



プリムラコレクション


* P.auricula * P.denticulata * P.elatior
* P.florindae * P.hirsuta * P.japonica
* P.×polyantha * P.sieboldii * P.veris
* P.vialii * P.vulgaris  


1 P.auricula(アウリクラ)

 アウリクラというのは、「小さな耳」という意味です。この種は、花が濃黄色で中心の花喉部(かこうぶ)に白い粉が円環状に付き、葉が多肉質で白い粉で覆われるのが特徴です。 開花期は春で、原種は草丈が10〜25cmです。原産はアルプス、東欧のカルパティア山脈、イタリアのアペニン山脈です。

 園芸種は「オーリキュラ」と呼ばれていて、花色は原種と同じ黄はもちろんのこと、紫、茶、赤、ピンク、白の他、他の花には珍しい灰、緑までもあります。 これに模様が、黄または白色の目、蛇の目、縦縞、覆輪、ぼかしが入るもの、花弁が八重になったり、波状になったり、その上に白い粉が覆っていたりと、 その多様さはつきることがありません。イギリスでは18世紀にオーリキュラの流行の全盛期を迎え、今も愛好会があるほどです。 オーリキュラは、花の形に整形美を求めて改良された結果、18世紀にはすでに完成の域に達していました。完成というのは、花が完璧に整った円の形つまり、 「円環形」をしているのです。まるで貴婦人のような高貴な魅力を持った花です。

P.auricula 'Alansford' P.auricula
'Alansford'
 1974年に育成され、花が暗赤色のオーリキュラです。オーリキュラは、品種によって花の中心の目の部分の色が黄色、淡黄色、白色がありますが、この品種は黄色です。よく見ると目の部分に白い粉が付いているのがわかります。ワインカラーのベルベットのような花弁に高貴な印象を受けました。
P.auricula 'Beatrice' P.auricula
'Beatrice'
 1914年に育成され、花が深い紫青色で薄い色のぼかしが入り、中心の目の部分が白色のオーリキュラです。他の花にはないアンティークな紫色に惹かれました。
P.auricula 'Boxburgh' P.auricula
'Boxburgh'
 花が深い赤紫色と薄い色の組み合わせで、中心の目が白色のオーリキュラです。ワインカラーの花弁がシックで素敵です。
P.auricula 'George Swinford's Leathercoat' P.auricula
'George Swinford's Leathercoat'
 花は黄色の濃淡で中心の目が白色で、波状になっているオーリキュラです。波状の花弁がエレガントです。

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2 P.denticulata(デンティクラタ)

P.denticulata P.denticulata
(デンティクラタ)
タマザキサクラソウ
 くす玉のような頭状花序には誰もが最初は驚かされるでしょう。 和名も玉咲きということで「タマザキサクラソウ」と付けられています。花序はピンポン玉よりすこし大きいぐらいの大きさで、100個近い花が着いていることがあります。 草丈は15〜60cmで、花色は、写真のようなピンクの他、濃ピンク、白色があります。インド北部の山地から1838年にジョン・フォーブス・ロイルという東インド会社の外科医が持ち帰り、 初めて栽培したものです。アフガニスタ、パキスタン、インド北部から中国のチベット南東部、ミャンマーの1,500〜4,500mの草原などに分布します。
P.denticulata 'Alba' P.denticulata 'Alba'
(デンティクラタ 「アルバ」)
 P.denticulataの白色の園芸品種です。白いくす玉のような花序は、華やかで清楚な印象がありました。

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P.elatior (エラチオル)

P.elatior  英名は「oxlip」で、P.veris の「cowslip」とともにヨーロッパでは人々の身近にある馴染み深いプリムラです。原産は、ヨーロッパのアルプス、ピレネー地域、 イギリスの一部、コーカサスからイランまでです。花色は、写真は淡黄色ですが一般的にはより濃い黄色です。開花期は春から初夏で、草丈は10〜30cmです。 本種は、P.×polyanthaの親の1種になっています。



P.florindae (フロリンダエ)

P.florindae  本種の特徴は、ご覧のとおり花が下向きに咲くことです。これはひっきりなしに降る雨から雌しべ・雄しべを守るためです。開花期は夏で50ぐらいも着花します。 草丈は60〜150cmとプリムラの中では大型です。「フロリンダエ」という種名は、20世紀のイギリスのプラントハンターのウォード(F.K.Ward)の妻の名にちなんでつけられました。 原産は、チベット南西部で、湿地向きの種です。ナツメグの香りが印象的です。



P.hirsuta(ヒルスタ)

P.hirsuta  花は、淡紫色から濃紫赤色で中央が白くなります。アルプス中央部及びフランスとスペインの国境沿いのピレネー山脈が原産です。開花は春で、草丈は7〜15cmです。 濃いピンク色がとても鮮やかなプリムラです。



P.japonica(ヤポニカ) クリンソウ

P.japonica  日本の固有種で、北海道・本州・四国地方の山地の渓流などに自生しています。「クリンソウ」は花が段状に輪生して咲き、寺院の塔の上につける「九輪」に似ているために付けられたとのことです。 「サクラソウ」の方が、日本の花と思われがちですが、クリンソウは日本だけで自生していますので、種名に japonica がつけられています。

 花色は、紫赤、濃ピンク、ピンク、白色と多彩で、園芸品種には蛇の目模様が入ったり、八重のものがあります。開花期は初夏で、原種の草丈は40〜80cmです。


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7 P.×polyantha(ポリアンタ)

P.×polyantha P.×polyantha
(ポリアンタ)
 プリムラの園芸品種の一つのグループで、P.verisP.vulgarisなどが交配されてできた交雑種です。 馴染みのある鉢花で、花色、花形が豊富です。
P.denticulata 'Alba' P.×polyantha 'Gold Laced'
(ポリアンタ 「ゴールド レースド」)
 この花は、赤茶の地色にまさに金色のレースの縁取りのような黄色い覆輪が入ります。 花弁を二分するハート型の変わった覆輪なので花弁数が2倍に見えます。開花期は夏で、草丈は約25cmです。こんなかわいいポリアンタもいいですね。

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8 P.sieboldii 'Cloth of Mist'
  (シーボルディー 「クロス オブ ミスト」) サクラソウ

P.sieboldii  'Cloth of Mist'  サクラソウは、ニホンサクラソウという別名があるほど日本の花というイメージが強いですが、日本だけではなく、朝鮮半島、中国東北部にも自生している種です。 5裂する花形が桜に似ていることから桜草(サクラソウ)と名付けられたとのことです。「シーボルディー」という学名は、想像がつくと思いますが、シーボルトにちなんでつけられました。

 開花期は初夏で、原種の草丈は約30cmです。日本では、古来から多くの園芸品種が作られ、花色はピンク、白、紫があり、模様は絞りなどがあり、 また花弁の形はフリンジや切れ込みの多いものなどがあり、実に多彩で、現在約300品種もあります。



9 P.veris(ウェリス)

P.veris  英名は、「cowslip」で、P.elatior の「oxlip」とともにヨーロッパでは人々の身近にある馴染み深いプリムラです。原産は、ヨーロッパ及び西アジアです。 花は黄色で花弁の基部がオレンジ色になります。 開花期は晩春から初夏で、草丈は6〜30cmです。



10 P.vialii(ヴィアリー)

P.veris  プリムラとは思えないユニークな穂状の花序の種です。小さな花が無数に着き、蕾が赤色なので赤い花が咲いているように見えます。 しかし、下から順に開花してくると次第にピンク色の「穂」になり、更に進むと青色または紫色になります。開花期は夏で、草丈は30〜40cmです。

 種名は、この種を発見したプラントハンターのドゥラヴェの友人のヴィアル(Der vial)にちなんで付けられました。原産は、中国南西部です。


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11 P.vulgaris(ウルガリス)

P.vulgaris P.vulgaris
(ウルガリス)
イチゲサクラソウ
 本種の原産は西及び南西ヨーロッパで、英名で「English primrose」と言われるぐらいイギリスで親しまれているプリムラです。 そのイギリスでは、4月19日を「Primrose Day」としていますが、これは、19世紀のイギリスの首相ベンジャミン・ディズレーリーが上着のボタンの穴に本種を挿していたことから、 命日をプリムラの日とした、とのことです。現在でも、この日には国会議員が上着にプリムラを付けたり、街中では造花を売ったりするそうです。

 開花期は春で、草丈は6〜20cmです。プリムラの園芸品種の多くは、この種を利用して育成されています。淡い黄色がいかにも初々しく、春最初に咲く花にふさわしいですね。
P.vulgaris' P.vulgaris
(ウルガリス)
イチゲサクラソウ
 のピンクのタイプ
 本種は黄色が基本ですが、花の中にこのようにピンク色の株も混在しています。この種は、野生の状態でも変異しやすいんです。

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