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アヤメの仲間

アヤメ科(Iridaceae

I アヤメ科のプロフィール


II アヤメ科コレクション


1 アイリス属   2 グラジオラス属   3 クロッカス属

4 スパラクシス属   5 ディエテス属   6 ディエラマ属

7 ティグリディア属   8 ニワゼキショウ属   9 ヒオウギ属

10 ラペルージア属   11 ワトソニア属


※各写真をクリックすると大きく表示されます

I アヤメ科のプロフィール

 アヤメ科の植物といって思い浮かべるのはもちろんその科名のとおりアヤメでしょう。他に、と言われたら馴染みのあるところではグラジオラス、クロッカス、 フリージアがあげられます。

 アヤメ科には、約70属1500種もの植物が属しますので意外と大きなグループです。

 こんなに多くの種があって形も様々なのにアヤメ科であると決められるのは、6枚の花弁があること、花柱(めしべ)の先が二つに分かれていることなどです。 と言いましても、雌しべは小さくてわかりませんよね。

 ほとんどが球根植物ですが、多くのアイリス属、シシリンキウム属などには球根のできない属もあります。

 アヤメ科は、熱帯から亜熱帯にかけて分布しますが、南アフリカを原産地とする種類が多く、これらは南アフリカのケープ地域にちなんで 「ケープ バルブ(Cape bulb)」と呼ばれています。球根植物に限らず南アフリカには驚くほどの数多くの園芸植物の原種が自生しているので、 花好きな私にはあこがれの聖地です。通常、観賞植物の原種は、花をより人間の好みに合った色・形にするため、栽培しやすくするためなどの目的で何年もかかって育種されるものですが、 ケープ バルブは原種にもかかわらずそのまま庭に植えてもいいぐらい鮮やかな花を咲かせます。
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II アヤメ科コレクション

1 アイリス属(Iris イリス)

 アイリス属の植物は、北半球の温帯が原産で、約250種が分布しています。

 Irisという属名は、ギリシャ語で虹を意味する「iris」に由来します。また、アイリスには「天の目」という意味もあるようです。

 本属には、根の形が「根茎」のものと「球根」のものがあり、根茎にはジャーマンアイリス、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブ、シャガが、 球根にはダッチアイリスなどが含まれます。

 本属は古い栽培植物で、紀元前16世紀にはすでにシリアからエジプトに渡ったらしいとのことです。

 一方、日本的な花の一つであるアヤメは花弁に編目模様があり、アミメがアヤメに変化して付けられたとのことです。

(1)I.reticulata 'J.S.DIJT' (イリス レティクラタ「J.S.ダイト」)

 一般に「ミニアイリス」と呼ばれている球根アイリスで、草丈は7〜15cm程度しかありません。

 ジャーマンアイリスのように大型ではないのですが、冬の終わりを告げる花として春先の花壇では重宝されます。

 原種はトルコ、レバノン、シリア、イスラエルなど中央アジアの標高2000m以上の岩山などに自生しています。

 reticulataという種名はで網目状という意味のラテン語に由来しますが、アヤメとは異なり花弁の網目模様ではなく、 球根についている網目模様に由来しているとのことです。

 英名も、学名と同様に「reticulate (網目状の) iris」と呼ばれています。

 開花期は、2〜3月です。

イリス レティクラタ「J.S.ダイト」
I.reticulata 'J.S.DIJT'
(イリス レティクラタ
「J.S.ダイト」)

(2)I.tectorum (イリス テクトルム)

 本種が典型的なアイリスとは違って見えるのは、外側と内側の花弁が広がっていて花型が平らになっているためです。

 和名は「イチハツ」と言い、学名よりも和名の方に馴染みがあると思います。和名があるので日本が原産地かと思っていましたが、 調べますと原産地は中国、ビルマで、古く中国から渡来したことがわかりました。

 一方、本種は、昔は、強い風を防ぐという迷信があったので屋根の上に植えられていました。そのせいか英名の一つが「roof iris」です。 他には「wall iris」という英名もあります。

イリス テクトルム
I.tectorum
(イリス テクトルム)

(3)I.cv (ジャーマンアイリス)

 ジャーマンアイリスは、交雑種の根茎アイリスです。(注)

 アイリス属の中では古くから栽培されてきた種類で、特にフランス、ドイツなどで盛んにいろんな品種が育種されましたので、 ジャーマンアイリスの名前の由来ともなっています。

 花色は、アイリスの語源が「虹」というだけあって七色どころか実にバラエティが多く、青、赤、白、ピンク色などあり、ない色は紅色だけです。 植物の種類によっては、黒色や青色の花の品種を育成するのが難しく、例えば黒色や青色のバラ、黒色のダリアなどの品種は珍重されています。 しかし、ジャーマンアイリスには野生種に黒色や青色などの種があるため、多様な花色の品種ができます。

 さらに、様々な品種は花弁の色に加えて根元に付いている「ひげ」と呼ばれる部分の色で印象も違ってきますので品種の特性を示すポイントにもなり、 英名もそのひげに着目して「tall bearded (ひげのある) iris」です。

 ジャーマンアイリスの品種は、花の上弁と下弁の色の組み合わせによって次の5つのグループに分けることができます。

・セルフ:上弁と下弁が同色のグループ
・バイトーン:上下の花弁が同系色で下弁の方が濃色のグループ
・バイカラー:上下が別系色のグループ
・プリカータ:覆輪など花弁の縁に模様が入るグループ
・ブレンド:花弁の縁以外の場所に模様が入るグループ


(注)
cv:交雑種は学名の種名の前に○○○○×○○○○のように「×」を付けるルールがあるのですが、ジャーマンアイリスのように交配親が明確でない場合は、 親を標記できないので「cv」と標記します。

イリス 「ティンテッド・クリスタル」 イリス 「ローゼ」 イリス 「ペースセッター」
I. 'Tinted Crystal'
(イリス 「ティンテッド・クリスタル」)
I. 'Rose'
(イリス 「ローゼ」)
I. 'Pacesetter'
(イリス 「ペースセッター」)

イリス 「シー・ウルフ」 イリス 「タコ・ベル」
I. 'Sea Wolf'
(イリス 「シー・ウルフ」)
I. 'Taco Belle'
(イリス 「タコ・ベル」)


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2 グラジオラス属(Gladiolus グラディオルス)

 グラジオラス属は、熱帯、南アフリカ、地中海沿岸、中近東からアジア西部が原産で、約250種が分布しています。

 Gladiolusという属名は、ラテン語で小さな剣を意味する「gladius」に由来していますが、これは葉の形が剣の形に似ているからという説と花序の形が剣のように細長いからという説があります。

 英名は、学名と同様に葉形が剣に似ていることから「sword lily」と呼ばれています。

 和名は、「トウショウブ(唐菖蒲)」、「オランダショウブ(阿蘭陀菖蒲)」または「オランダアヤメ」です。グラジオラスは水性植物ではありませんが「ショウブ」と付いているのは、 葉の形がショウブに似ているからです。また、「唐」は外国から渡来したことから、「オランダ」はオランダから渡来したことから付けられました。

グラディオルス カルネウス
G.carneus
(グラディオルス カルネウス)
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3 クロッカス属(Crocus クロクス)

 Crocusという属名は、ギリシャ語で糸という意味の「krokos」からで、これには雌しべが糸状に長く伸びることに由来するという説と神話上の青年の名前に由来するという説があります。 大きな雌しべを料理に利用するサフランもクロッカス属なので前者の由来はわかりやすいですね。

 一般に「クロッカス」といえば「ハナサフラン」または「ダッチ・クロッカス」を言います。

 本属は、地中海沿岸から小アジアが原産で、約80種が分布しています。

 開花期は、春咲きが大半ですが、秋咲きの種もあります。

 また、クロッカスには、花と葉しかなく茎がない植物で、地下に球茎があります。

クロクス クリサンツス「プリンセス ベアトリックス」
C.chrysanthus 'Princes Beatrix'
(クロクス クリサンツス
「プリンセス ベアトリックス」)
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4 スパラクシス属(Sparaxis

 Sparaxisという属名は、ギリシャ語で裂けるを意味する「sparasein」に由来しますが、これは花を包む仏炎苞に切れ込みが入っているためにつけられたとのことです。

 本属は、南アフリカが原産地で、約6種が分布しており、球茎で繁殖します。

 和名は「スイセンアヤメ」、英名は「wandflower」で、ディエラマ属と同じです。

スパラクシス トリコロル「エクセルシア」
S.tricolor 'Excelsior'
(スパラクシス トリコロル
「エクセルシア」)
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5 ディエテス属(Dietes

 Dietesという属名は、ギリシャ語で「二つに関係を持つ」というと言う意味で、Moraea(モラエア属)とIris(アイリス属)の二つの属と近縁であることに由来します。 モラエア属の花とよく似ているため、本属は以前はモラエア属に分類されていました。本属とモラエア属との大きな違いは、本属が根茎であるのに対し、 モラエア属は球根であることです。

 本属には6種ありますが、そのうち5種が南アフリカ、残りの1種がロードハウ島の原産です。

ディエテス ビコロル ディエテス グランディフロラ
D.bicolor
(ディエテス ビコロル)
D.grandiflora
(ディエテス グランディフロラ)


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6 ディエラマ属(Dierama

 ディエラマ属は、南アフリカのケープ南部からエチオピアに約45種分布しています。

 春から夏にかけて長い花茎を伸ばし、じょうご形のピンクの花を下垂して咲かせます。Dieramaという属名も古代ギリシャ語の「漏斗(じょうご)」を意味する言葉から付けられたとのことです。

 また、その姿から英名は「angel's fishing rod(天使の釣り竿)」と呼ばれていますがその他に「fairy wand(妖精の杖)」、「wandflower(杖の花)」とも呼ばれています。

日当たりの良いやや湿り気のあるところに生える多年性植物です。

ディエラマ アムビグウム ディエラマ ドラコモンタヌム ディエラマ パウシフロルム
D.ambiguum
(ディエラマ アムビグウム)
D.dracomontanum
(ディエラマ ドラコモンタヌム)
D.pauciflorum
(ディエラマ パウシフロルム)

ディエラマ ペンドゥルム ディエラマ ピクツム ディエラマ プルケリムム
D.pendulum
(ディエラマ ペンドゥルム)
D.pictum
(ディエラマ ピクツム)
D.pulcherrimum
(ディエラマ プルケリムム)


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7 ティグリディア属(Tigridia

 Tigridiaという属名は、ラテン語でトラを意味する「tigris」に由来しますが、これは花弁の中心に茶色の斑点、まさに虎斑(とらふ)が入ることから付けられたとのことです。

 英名も学名と同様の発想で「tiger flower」と呼ばれているほか、「one-day lily」、「shell flower」などがあり、one-day lilyは花が1日で萎んでしまうためです。

 和名は学名と同じ由来で「トラユリ」とトラが付いています。

 アヤメ科なのにユリと付けられているのが気になりますが、one-day lilyやトラユリに限らず、植物の和名、英名には「ユリ」と付いた種類が意外と多いのです。 これは、ヨーロッパで、18世紀までは目立つ花をユリと呼んでいた名残だとのことです。

 本属は中南米が原産地で、約12種が分布します。

 園芸品種には花色が黄、白、橙、ピンク、赤の品種があります。

ティグリディア パウォニア 「アウレア」
T.pavonia 'Aurea'
(ティグリディア パウォニア
「アウレア」)


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8 ニワゼキショウ属(Sisyrinchium シシリンキウム)

 ニワゼキショウとは、「庭に咲くセキショウ」という意味です。このセキショウとはサトイモ科の植物なので遠縁ですが、 葉が似ているので付けられたとのことです。

 本属は、アメリカ大陸が原産で、100種以上分布しています。日本にも「ニワゼキショウ(S.rosulatum)」という種が自生していますが、 これはアメリカからの帰化植物です。

 英名は、「blue-eyed grass」です。

シシリンキウム ストリアツム シシリンキウム ベルム 「カリフォルニアン・スカイズ」
S.striatum
(シシリンキウム ストリアツム)
S.bellum 'Californian Skies'
(シシリンキウム ベルム
「カリフォルニアン・スカイズ」)


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9 ヒオウギ属(Belamcanda ベラムカンダ)

 ヒオウギという属名は、「檜扇(ひおうぎ)」または「射干(ひおうぎ)」に由来し、前者は扁平な葉が扇のように並んでいることから付けられたとのことです。

 本属は、インド北部、中国南部、台湾、日本が原産地です。

 Belamcandaという属名は、インドのマラバル地方の現地名に由来しています。

 本属は、球根ではなく根茎を持つ植物です。

ベラムカンダ キネンシス
B.chinesmis
(ベラムカンダ キネンシス)




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10 ラペルージア属(Lapeirousia

 ラペルージア属は、アフリカ南部が原産地で、約60種が分布します。

 Lapeirousiaという属名は、フランスの生物学者のラ・ペルーズにちなんで付けられました。

 和名は、「ヒメヒオウギ属」で、「ヒオウギ」に似ていて小型であることから付けられました。

ベラムカンダ キネンシス
L.laxa
(ラペルージア ラクサ)


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11 ワトソニア属(Watsonia

 ワトソニア属は、南アフリカのケープ地方などが原産地で、約60種分布しています。

 Watsoniaという属名は、18世紀のイギリスの植物学者のワトソンにちなんで付けられました。

 英名は、花の形が似ているところから「bugle (軍隊ラッパ) lily」と呼ばれています。

 和名は、「ヒオウギズイセン」です。

 草丈は種によって異なりますが、60〜150cm程度です。花の色は、白、ピンク、橙、赤、紫とバラエティがあります。

 開花期は夏で、耐寒性も耐暑性もあります。

ワトソニア 「スタンフォード・スカーレット」
W. 'Stanford Scarlet'
(ワトソニア
「スタンフォード・スカーレット」)




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