Vol.8 No.12
【特 集】 超高齢社会における食と健康


フレイル対策に対応した高齢期の栄養管理
武庫川女子大学 食物栄養科学部    前田 佳予子
 超高齢社会が急速に進展しているわが国においては,独居高齢者や高齢者夫婦のみ世帯が年々増加している現状のなか,高齢者が最期まで自分の住み慣れた地域で過ごすためには,食事と栄養が重要な鍵となる。そのためには,どのような食事や栄養を摂り,高齢者の栄養管理をどのように維持して,戻らないフレイルではなく,戻るべきところで止めて身体機能障害に陥らない高齢期の栄養管理の重要性について述べる。
(キーワード:超高齢社会,フレイル,虚弱,栄養管理,サルコペニア)
←Vol.8インデックスページに戻る

国民健康・栄養調査からみた高齢者の栄養と食事
東京都健康長寿医療センター研究所    横山 友里
 国民健康・栄養調査は国民の健康や栄養状態を把握するために重要な役割を果たしており,近年では高齢化の進展をふまえ,高齢者の健康・生活習慣の実態把握に焦点をおいた調査や関連研究も推進されている。高齢者の栄養状態・食事摂取状況に関する知見としては,年齢階級が高くなるほど,低栄養になりやすく,エネルギー摂取量の減少をはじめ,多くの栄養素や食品群の摂取量が減少することや,たんぱく質摂取量がフレイル予防の観点からは少ないことなどが報告されている。これらの知見は,我が国の高齢者の栄養状態および食事摂取状況の現状や課題をふまえた,低栄養やフレイル対策の基礎資料として活用されることが期待される。
(キーワード:国民健康・栄養調査,高齢者,低栄養,フレイル,食事摂取状況)
←Vol.8インデックスページに戻る

高齢者の栄養と口腔機能の関わり
東京都健康長寿医療センター研究所    本川 佳子
 食事の摂取に大きく関わるのが歯数をはじめとした口腔機能であり,歯の喪失が進むことで野菜類などの噛みにくい食品を避けデンプン類が豊富な食品を好むようになることが報告されている。高齢期におけ る適切な栄養摂取の維持には,口腔機能や義歯の状況などを把握したうえで栄養管理を行う必要があり,歯科と栄養連携の必要性が高い。最近では栄養指導と口腔機能向上や補綴(ほてつ)を組み合わせた介入研 究も行われ,歯科と栄養の連携により,高齢期の健康維持や健康寿命延伸に単独では得られないシナジー効果が存在する可能性が示されている。今後「食べることの維持」という支援はさらに求められ,歯科と栄養 の連携が不可欠になるだろう。
(キーワード:口腔機能,歯科と栄養連携,食べることの維持)
←Vol.8インデックスページに戻る

わが国の食料品アクセス問題の実態と高齢者
農林水産省農林水産政策研究所    高橋 克也
 食料品アクセス問題は日常的な買い物といった流通上の問題にとどまらず,住民の生活基盤の喪失という地域や社会問題であり,食生活を通じて健康にも影響を及ぼす複雑な問題である。メッシュ統計とGISを組み合わせた推計から,わが国のアクセス困難人口は全体として増加傾向にあり,大都市および後期高齢者でその傾向が著しいものの地方や農村部においては減少傾向にあることが確認された。同時に,食料品アクセス問題が高齢者の自立度や食品摂取に及ぼす影響も確認されており,超高齢社会を迎えるわが国において解決すべき重要な課題となっている。
(キーワード:買い物難民,食料品アクセス問題,アクセス困難人口,高齢者の自立度,食品摂取の多様性)
←Vol.8インデックスページに戻る

日本におけるフードデザート問題の特徴とポスト・コロナ時代の課題
茨城キリスト教大学 文学部    岩間 信之
 フードデザート(食の砂漠:FDs)とは,何らかの生活環境要因(たとえば買い物環境)の悪化により,地域住民が健康的な食生活を営むことが困難となった地域を意味する。FDsの性質は地域によって異なる。日本の場合,食料品アクセスの低下に起因する農村型のFDsや,ソーシャル・キャピタルの低下や貧困と高い相関のある都市型FDsなどが確認されている。新型コロナ問題は,高齢者の生活環境を大きく変化させるだろう。ポスト・コロナ時代を念頭に,高齢者の支援策を再検討する必要がある。
(キーワード:フードデザート,ソーシャル・キャピタル,貧困,ポスト・コロナ時代)
←Vol.8インデックスページに戻る

高齢者向け配食サービスの動向と課題
女子栄養大学 栄養学部    高城 孝助
 わが国は2007年には高齢化率が21%を超え「超高齢社会」を迎えた。総務省は2020年9月15日現在の65歳以上の高齢者推計人口を前年比30万人増の3,617万人と発表した。総人口に占める割合(高齢化率)は0.3%増の28.7%となり,いずれも過去最高を更新した。総人口が前年比29万人減の1億2,586万人となる一方,高齢者人口は増え続け,今後も増加することが予想されている。高齢化の進展と共に要介護支援・買物弱者・低栄養の高齢者も増え続けている。こうした中で,伸びが期待されているのが,高齢者向け配食サービスである。
(キーワード:中食,要介護者,介護食品,配食の定義,配食事業の構成)
←Vol.8インデックスページに戻る

高齢社会における食の宅配サービスについて
日清医療食品株式会社    矢口 孝枝
 高齢社会において,医療や介護を必要とする方がさらに増加することが見込まれており,食事を宅配する配食サービスは重要な役割を果たす。配食サービスの必要性と実際に配食サービスを提供している立場から,配食サービスのポイントを述べる。
(キーワード:高齢者,配食サービス,宅配,配食のポイント,栄養バランス)
←Vol.8インデックスページに戻る