Vol.3 No.8
【特 集】 新たな機能性表示食品制度と食品開発の方向


機能性表示食品制度の概要
池戸 重信
 これまで国が定めた基準や規定に基づく健康食品は,栄養機能食品(マークなし)と,特定保健用食品(マークあり)の2種のみであったが,届出制による機能性表示食品制度が第3の公的制度として施行された。当該制度は,安全性の確保,機能性表示を行うに当たって必要な科学的根拠および消費者にとって誤認のない機能性表示等の要件を満たすことで,高齢化等に伴う消費者ニーズに応えるとともに,生鮮食品(農林水産物)も対象にしていることから,地域食材の高付加価値化による産業振興にも資するものである。
(キーワード:機能性表示食品,食品表示基準,特定保健用食品,ダイエタリーサプリメント,システマティックレビュー)
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褐藻の魅力と活用
北海道大学 大学院水産科学研究院     宮下 和夫
 海藻は優れたバイオマス資源として世界中から注目を集めている。海藻にはミネラル,食物繊維,良質なタンパク質,特徴的な脂質成分など価値の高い栄養素が豊富に含まれており,減塩素材や生活習慣病予防素材としての活用が期待される。中でも,褐藻脂質に含まれるカロテノイド,フコキサンチンには,独特の分子機構に基づく抗肥満作用や抗糖尿病作用が見出されており,フコキサンチンを多く含む褐藻脂質の活用が図られている。
(キーワード:海藻,褐藻,バイオマス資源,ミネラル,減塩食,抗肥満,抗糖尿病)
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ホタルイカの健康機能性について
富山短期大学 食物栄養学科    竹内 弘幸
 ホタルイカの健康機能性について,ラットを用いて検討を行い,肝臓の脂質低下作用を有することを明らかにした。マイクロアレイを用いた遺伝子測定および脂肪合成能を測定した結果,ホタルイカの摂取により肝臓脂肪合成が抑制されていることが判明した。ホタルイカの摂取により,肝臓での脂肪合成が抑制され,肝臓脂肪量が低下すると考えられた。ヒトを対象にした予備的試験を実施した。ホタルイカを4週間摂取した結果,脂肪肝である6名中3名で脂肪肝の改善効果が認められた。有効成分の特定とより大規模なヒト試験の実施が,今後の課題といえる。
(キーワード:ホタルイカ,機能性,生活習慣病,肝臓,脂肪肝,ヒト試験)
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エゴマ油の機能性を活用した新規用途の可能性
富山大学 和漢医薬学総合研究所    渡辺 志朗
 エゴマ(荏胡麻)の実から得られるエゴマ油には,n―3系脂肪酸であるα―リノレン酸が豊富に含まれており,n―6系リノール酸はわずかしか含まれていない。一方,様々な生活習慣病の増加は,食生活におけるn―6系脂肪酸の過剰摂取と,α―リノレン酸などのn―3系脂肪酸の摂取減が一因になっていると考えられる。そこでエゴマ油は健康維持・増進には欠かせないものである。本稿はエゴマ油の機能性の科学的根拠ならびに,エゴマ油をこれらのニーズに合わせた新しい活用の方向性について述べたい。
(キーワード:必須脂肪酸,アラキドン酸,エイコサペンタエン酸,エイコサノイド)
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コメ由来するプロテアーゼ阻害タンパク質を利用した新規食品素材の開発
新潟県農業総合研究所 食品研究センター    大坪 貞視
 システインプロテアーゼは感染症を含めた様々な病態にかかわっていることから,その阻害因子は,新たな機能性食品成分として有望である。そこで筆者らは,コメに含まれるシステインプロテアーゼ阻害タンパク質に着目し,骨粗鬆症などの骨関連疾患や歯周病の予防に利用できるかを検討した。コメから抽出したプロテアーゼ阻害タンパク質は歯周病菌の増殖や病原性を抑制し,コメタンパク質OsCYT1は破骨細胞の分化や骨吸収作用を抑制できる。このことから,骨関連疾患や歯周病の管理・予防のための機能性食品に利用可能と期待される。
(キーワード:コメ,システインプロテアーゼ,プロテアーゼ阻害剤,歯周病,骨関連疾患,破骨細胞,機能性食品)
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米胚乳タンパク質の特性と新規健康機能
新潟大学    久保田 真敏・渡邊 令子・門脇 基二
 米は日本人の食文化の中心であり,エネルギー供給源としてはもちろん,植物性食品の中では最も重要なタンパク質供給源でもある。このように重要な米胚乳(精白米)タンパク質ではあるが,その機能性に関する研究はいくつかの障害があり,これまで非常に限られてきた。しかし,著者らの研究グループはその課題解決に成功し,米胚乳タンパク質の新規健康機能を探索する研究を行い,いくつかの機能性を発見することに成功した。本稿では,これまで著者らの研究グループが報告した米胚乳タンパク質の脂質代謝改善作用ならびに糖尿病性腎症進行遅延作用について解説する。
(キーワード:米胚乳タンパク質,消化性,脂質代謝異常,糖尿病性腎症)
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アマニ(亜麻仁)リグナンを活用した機能性食品開発
愛媛大学 農学部附属食品健康科学研究センター    菅原 卓也
 亜麻の種子であるアマニは,ω3脂肪酸であるα―リノレン酸や食物繊維を豊富に含むとともに,ポリフェノールの一種であるリグナン類も多く含んでおり,アマニリグナンとして,セコイソラリシレジノールが知られている。これまでの研究で,セコイソラリシレジノール,特にマイナス体セコイソラリシレジノールは,生体内において脂肪合成を抑制するとともに,アディポネクチン産生を促進し,脂肪燃焼を高めることが明らかになった。さらに,血糖値抑制作用や,脂肪肝改善効果を持つことが確認された。α―リノレン酸と食物繊維に加え,リグナンを高含有するアマニは,メタボリックシンドローム改善効果をもつ機能性食品素材として期待できる。
(キーワード:アマニ,リグナン,セコイソラリシレジノール,メタボリックシンドローム改善)
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マッシュルームのすべてを活かす
−機能性食品、口腔ケア剤への展開−
有限会社三蔵農林    片岡 未穂子
岡山大学病院 新医療研究開発センター    伊東 孝
 生産者としてマッシュルームのすべてを生かすために,産産連携や産学連携を進めている。その成果について,マッシュルームの歴史と生産のポイントといった生産者側の紹介から機能性食品・口腔ケア製品への産学連携に至るまでの展開を紹介する。また,未利用資源の活用構想についても触れる。
(キーワード:マッシュルーム,口腔内感染症,レクチン)
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