Vol.25 No.9
【特 集】 期待される野菜の生産と流通


国内における野菜流通の現状と諸課題
東京農業大学 藤島 廣二
 昨年(2001年)4月23日から11月8日にかけてネギなどを対象にした暫定セーフガードが発動された。 また、本年(2002年)6月7日には輸入増に対応するために野菜生産出荷安定法が改正された。

 これらの「事件」から明白なように、現在では野菜は国内で自給できる作物ではない。それどころか、 輸入の増加を防ぐために国レベルで何らかの対策を講じなければならない段階にいたってしまった作物といえる。

 そこで以下では、これまでの野菜輸入の増加に関する特徴を整理したうえで、その増加に起因する流通面での変化を指摘し、 さらにそれらを踏まえて産地・農協や行政が採るべき今後の輸入対策について考察することにしたい。
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野菜の新品種開発の現状と展望
(独)農業技術研究機構 野菜茶業研究所    吉田 建実
 品目が多いため、実用品種開発は民間に負うところが大きく、公立場所は地域特産品目などの育種、 国は先導的・開発分野の育種や新育種技術の開発を担っている。野菜輸入急増後は省力・軽作業化適性形質が注目され、葉根菜類では機械化適性、 果菜類では整枝・誘引、結実管理作業の省力化を目指した育種が行われている。差別化の観点から、高機能性品種や地方品種も注目されている。 病害虫抵抗性育種は着実に進展しているが、侵入病害虫対策が課題である。遺伝子組換え、DNAマーカーは実用的技術に今一歩とどいていない。 育種目標・技術が高度化する中で品種開発の加速が求められ、国、公、民間の連携強化が必要である。
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野菜の高品質化技術
(独)農業技術研究機構 野菜茶業研究所    東尾 久雄
 野菜に対する消費者ニーズは社会情勢の変化を反映し、生理機能に富み、さらに安心・安全な野菜をもとめるものへと変遷しつつある。 消費拡大に向け、野菜の高品質化を目指すには、これらの視点からの検討が重要となっている。その一つが有機農産物であり、 有害微生物や有害化学物質からの安全性確保技術、そして機能性の解明とそれに基づく育種・栽培技術による野菜の高機能化である。 これらの研究問題について、技術開発の現状を解説するとともに今後の課題を示す。
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ハウス夏秋どりトマトの窒素栄養診断法の開発と実証
北海道立道南農業試験場    坂口 雅己
 北海道におけるハウス夏秋どりトマトの窒素栄養診断法を開発した。下位葉の葉柄硝酸濃度は窒素施肥量に対応して変化し、トマトの窒素栄養状態を反映していた。 特に、第1果房直下葉の葉柄硝酸濃度は積算窒素施肥量と高い相関を示し、窒素栄養診断の採取葉位として最適であった。収量および跡地の硝酸態窒素を考慮した結果、 栄養診断基準値を葉柄硝酸濃度4000〜7000ppmとした。

 地域の中核的な生産者が栄養診断技術を実践した結果、栄養診断を行ったハウスでは慣行と比べ大幅な減肥となり、収量も十分得られた。
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野菜生産の機械化と課題
生物系特定産業技術研究推進機構    安食 惠治
 農業従事者の高齢化や労力不足に加え、農作物の効率的な低コスト生産が求められている。機械化が遅れていた野菜生産の分野でも、 このようなニーズを背景に関係機関などで精力的に機械開発が進められている。収穫や調整作業など、これまで機械化が困難とされていた分野について、 21世紀型農業機械等緊急開発事業で取り組んでいる野菜用機械の概要を紹介した。特に、機械化一貫体系の確立には、機械の高性能化などとともに、 標準栽培様式の普及・促進がより一層必要なことを述べた。
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野菜の流通形態の変化と流通事例
JAながの    北澤 栄樹
 近年、野菜の流通において「顔の見える販売」、「地産地消」という言葉が多く使われ、量販店の台頭により、市場における価格形成機能の低下、 消費者からの強い要求も手伝って直売による流通形態が数多く生まれている。

 そこで、当JAにおける「顔の見える販売」、「地産地消」の取り組み事例を報告することとした。
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