有色農産物の重要性 |
独立行政法人 食品総合研究所 篠原 和毅 |
わが国では、伝統的に黒大豆、黒ごまを始めとして、黒色・紫色・赤色・黄色など、多くの有色の農産物・食材・食品を食してきている。
近年の食品の健康寄与(生体調節機能)に関する研究の急速な進展により、農産物などの食材に含まれる色素成分がわれわれの健康の維持・
向上、生活習慣病予防に深く関与していることが明らかにされつつある。このような色素を上手に利用することが健康維持・向上に重要である。
ここでは、農産物・食材・食品のいわゆる「あか」と「くろ」などの色の重要性について論議する。
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農産物・食品の色と生理的機能 |
独立行政法人 食品総合研究所 津志田 藤二郎 |
色の濃い農産物・食品は、概して体調調節機能が強い場合が多く、その色を担う成分としてはカロテノイドやフラボノイド、
さらには農産物の加工工程で生じるメラノイジンなどがあげられる。それらは抗酸化性のみならず、さまざまな機能を示す多機能成分でもあり、
動脈硬化やがんなどの生活習慣病の予防に役立つものと推定されている。これまで、加工工程で生じる褐変などは、
多くの場合品質低下の要因として取り上げられてきたが、今後は、カロテノイドやフラボノイドなどとともに農産物
・食品の有用な色として評価することが望まれる。
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色の豊かさを上手に利用した日本の食文化 |
拓殖大学 北海道短期大学 相馬 暁 |
農産物の色は、評価・品質基準の一項目であるとともに、購買時には消費者の選択基準ともなる。
また、中味成分としてのビタミンやタンパク質の多少をも色は反映している。さらに、農産物の色そのものが機能性を持ち、
昔から漢方薬、民間療法として利用され、それを裏付けるものとして、東洋医学における五色の理論が知られている。
なお、日本人の食文化は色の持つ機能性などを賢く活用している。
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有色作物育種の現状と展望 |
(独)農業技術研究機構 東北農業研究センター 山口 誠之 |
作物育種の歴史の中で、多収性、耐病性、良品質などは重要な目標であり、有色のものはむしろ排除される傾向にあった。
有色作物は黒大豆など一部のものを除いて在来種が利用されてきたが、近年、独特の色や味に加えてその機能性が消費者から評価されるようになってきた。
こうした背景のもと、有色を目標とした稲、豆類、いも類の品種が次々に育成され始めている。これらの機能性はかんしょを中心に徐々に解明されつつあるが、
機能性を考慮した育種は始まったばかりである。今後、消費者が求める有色の機能性品種育成を効率的に進めるためには、育種と食品、医学など、
分野間の強力な連携が必要である。
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アントシアニン・プロアントシアニジン含有農作物の機能性と利用 |
(独)農業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター 須田 郁夫 |
九州沖縄地域には、温暖な気象条件のもと、多種多様な赤・黒・紫の農作物が生産されている。紫サツマイモ、黒大豆、紫黒米にはアントシアニンが、
黒大豆、茶大豆、赤米、亜熱帯果実にはプロアントシアニジンが含まれている。アントシアニン、プロアントシアニジンは高機能性成分であり、
これらを含む農作物は生活習慣病の予防・治療が可能な食材として利用可能である。
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機能性色素成分を活かした加工食品および食品素材の開発 |
キッコーマン株式会社 有賀 敏明 |
日本の人口の超高齢化現象は、これから半世紀以上にわたって続く。その中では、単なる長命ではなく、
「元気で長生き」がますます望まれるようになる。その成否を握る重要な環境因子として、食物が指摘されている。食物の中で、
緑黄色野菜が健康保持のため有用であることは、よく知られている。
近年、緑黄色以外の種々の天然色素成分も健康保持の機能性を有することが明らかにされつつある。
この点については、醤油や赤ワインの色素成分の機能性を例に述べる。ついで、機能性色素を活かした加工食品を開発する際に、
留意すべき点を考察するとともに、最後に、開発の参考例として、プロアントシアニジン(ブドウ種子抽出物)の開発を紹介する。
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