Vol.25 No.6 【特 集】 世界の米は今!! |
国際米需給の構造変化 −アジアの動きを中心に− |
農林水産省 農林水産政策研究所 井上 荘太朗 |
米の国際価格はここ数年来、歴史的低水準にある。これは穀物の国際市況の全体的な低迷にともなう現象であるが、加えて、 価格変動が激しいという米の商品特性も、この大幅な価格低下の要因になっている。一方近年の世界全体の米貿易量は、 80年代と比べてほぼ倍増と急拡大した。これは、一度は自給を達成した島嶼部アジアの途上国が再び米の大輸入国に転落したためである。 この貿易拡大の背景には、干ばつや洪水による不作という一時的な要因もあるが、それ以上に、経済のグローバル化に伴って、 米についても国際的な分業体制が深化していることを認識する必要がある。 |
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わが国の米輸入 |
東洋大学 経済学部 服部 信司 |
わが国のコメ輸入は、ウルグアイ・ラウンドで合意したミニマム・アクセスのもとで行われている。現在の数量は68.2万t(精米)。 ミニマム・アクセス米には、加工・援助用の一般輸入米(58万t:85%)と主食用のSBS:売買同時入札米(10万t:15%)がある。 輸出国別では、アメリカが半分近くをしめており、近年中国が急伸長している。その用途は、加工用37%、援助33%、主食10%。 ミニマム・アクセス米は、転作に影響を与えないという前提で運用されているが、加工用途での心理的影響は否定できない。 WTO農業交渉において、わが国は、その制度改革→削減を提起している。 |
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中国・黒龍江省の米輸出戦略 |
JA福岡中央会 高武 孝充 |
中国・黒龍江省はわが国の「平成米騒動」以来、急速に水稲の作付を拡大し、いまや良食味のジャポニカ米の大産地である。 わが国のミニマム・アクセス米のうちおもに主食用に供されるSBS輸入米のシェアのトップが米国産から中国東北産にとってかわったのは1998年であった。 2001年12月、念願のWTO加盟を果たした中国は、国際競争力のある農産物への作付転換など農業の構造調整を推進する一方で、 とくに米については、わが国総合商社などとの合弁で精米加工公司を設立し、おもに日本や韓国をターゲットに米輸出戦略の布石を着々と打ってきている。 |
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世界のイネ品種開発 |
(独)農業技術研究機構 作物研究所 池田 良一 |
限られた紙面で、世界各国のイネ品種開発のすべてについて紹介するのは大変難しい。そこで、次のように全体を3つのジャンルに分け、 それぞれについて概要を説明することにしたい。最初に、アジア、アフリカなど発展途上国の稲作を支える国際研究機関の最近の研究トピックスから、 国際稲研究所(IRRI)のゴールデン・ライス、および西アフリカ稲開発協会(WARDA)のネリカ(NERICA)を紹介する。 次いで、中国、インドなど米生産大国におけるハイブリッド・ライスを中心とした最近のイネ品種開発の現状を紹介する。 最後に、アメリカ合衆国やオーストラリアなど米の輸出国における最近の品種作付状況および新品種開発について紹介する。 |
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新たな低コスト稲作技術 |
(独)農業技術研究機構 東北農業研究センター 下坪 訓次 |
ウルグアイ・ラウンド農業合意を受けての国際化対応、さらには担い手の高齢化などの問題を抱えるなかで、稲作の省力化、
軽作業化、低コスト化技術の開発は喫緊の課題となっている。 先のUR農業合意のもと、新しい時代の農業キーテクノロジーとして、稲作関係については「日本型直播技術の確立・普及」 が掲げられ、試験研究、行政、普及、民間などの連携協力のもとに推進されている。ここ2,3年、直播栽培の普及動向に大きな変化が見られることから、 普及の大きく伸びている播種方式について、その技術的特徴と今後の課題を概説した。 |
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わが国のイネ品種開発の現状 |
(独)農業技術研究機構 作物研究所 井辺 時雄 |
現在作付されている主要な品種は、「コシヒカリ」とその系譜につながる品種である。1970年当時と比較すると、 少数品種への作付集中が進んでおり、遺伝的な多様性が失われている。全体的に食味は向上しているが、 収量性やいもち病抵抗性の改良はまだ不十分である。今後のイネ育種の目標としては、環境保全型稲作を実現するための抵抗性遺伝子の多様化と複合病害虫抵抗性の付与、 稲作の低コスト化や担い手不足に対応した直播適性品種の開発、水田高度利用を図るための晩植適性品種、飼料イネ品種、 非常食用品種の開発など多様なニーズに応えた多様な品種の育成が重要である。 |
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