Vol.25 No.4
【特 集】 環境を浄化する植物


 植物による重金属汚染土壌の浄化
−ファイトレメディエーション−
日本大学 生物資源科学部    長谷川 功
 植物による重金属汚染土壌の浄化、すなわちファイトレメディエーションは、植物に土壌中の重金属を吸収させて除去するとともに、 植物体の灰化によって重金属のリサイクルをも可能にする技術として注目されている。重金属汚染土壌の実態や今後の汚染の進行予測とともに、 植物による重金属汚染土壌の浄化に関する国内外の研究動向、重金属耐性植物の選抜やそれらの耐性機構、 さらには遺伝子組換えによる重金属耐性植物の分子育種やその利用の展望などについて報告する。
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 水生植物の水質浄化能とCO2固定能を利用した環境浄化システム
株式会社 竹中工務店 技術研究所    茅野 秀則
 水生植物は、水中のチッ素、リンを吸収除去する自然浄化としての3次処理機能をもっている。さらに、光合成に必要なCO2を気孔を通して取り入れ、 水中のCO2をも利用する機能をももっている。

 水生植物を利用した環境浄化システムの実水域での展開で利用する水生植物種は、オランダガラシ、ホテイアオイなどが適当であり、 大量の水生植物の水域からの回収および有用物への変換のためには機械システムが必要となる。

 汚染の進む湖沼などで水生植物を大規模に栽培するならば、水域の浄化だけでなく、地球環境の保全としてのCO2削減に寄与することが考えられる。
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 イネを利用した重金属汚染土壌の修復の可能性
(独)農業環境技術研究所    阿江 教治
 FAO/WHO合同のCODEX委員会における食品中のカドミウム含量の厳しい基準値設定の動向は、世界的な注目を浴びている。 わが国の主要な米生産地においても現在の基準によるカドミウム汚染米や準汚染米が検出されることがある。これに対して、 玄米カドミウム含量のさらに低い品種を探そうと検討したが、現在の日本型イネからみつけることができなかった。 反対にカドミウムを蓄積する品種が検索できた。そこで、これを用いたカドミウム汚染土壌の修復の可能性を検討した。
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 千葉県における花粉の少ないスギ優良品種の選抜と実用化
千葉県 森林研究センター    遠藤 良太
 千葉県森林研究センターでは、林業側からスギ花粉抑制を目的として、林業用種苗に利用しているスギ品種の雄花着花性に関する研究に取り組み、 スギの着花量は品種間に差があり、しかも遺伝性が高いことを明らかにした。このことから、1995年に花粉の少ないスギ6さし木品種、 13実生品種を選抜した。さらに、選抜品種の実用化を図るために、種子とさし穂の供給量の検討を行い、 県内の造林本数に対応できる種苗生産体制を確立した。
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 環境改善植物としてのケナフの栽培と利用
高知大学 農学部    鮫島 一彦
 繊維作物であるケナフは古来、人類の生活と密着して多くの国々、主として中国、インド、タイなどの発展途上国で大量に栽培、 加工され、外貨獲得に大きく貢献してきた。最近、このケナフが新たな環境改善植物として世界中で注目されるようになった。 これは、ケナフの栽培が容易でその適地が広いこと、伝統的な皮の靭皮繊維の利用に止まらず、 芯の木質部も利用が可能であるという事実が先進諸国で見直され、その栽培、加工、利用が日本を含めて、 幅広く世界中で行われるようになってきたためである。ここでは、ケナフの環境改善植物としての世界の研究開発の現状をいくつか紹介する。
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 パピルスなど水辺の植物による水質浄化
大阪府立 農業技術センター    形山 順二
 窒素汚染の進んだ水路に植物を植え、収穫できた9種の植物の窒素含有量から窒素の浄化量を求めるとともに、 植物体の利用法を検討した。その結果、パピルスやシュロガヤツリは窒素浄化量が多く、また、和紙やスダレ、 籠など工芸品に加工し易く、市民参加の水質浄化用植物としてふさわしい。ジュズダマは利用法が狭く、ポンテデリアは花が美しく、 好感が持てる。ツルヨシは草姿が悪い。キショウブは花が日本的光景を演出する。ケナフは水生植物ではないので、育ちが悪い。 セリは食用になり、イグサは和紙になるが、両者とも浄化量は少ない。
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 環境負荷化学物質の負荷軽減型作物
神戸大学 遺伝子実験センター    大川 秀郎
 環境負荷化学物質、すなわち、ダイオキシン類、内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)、ある種の残留農薬などの負荷軽減を目的に、 哺乳動物の高度に発達した薬物代謝酵素系のうちから、外来脂溶性異物の代謝に係わるチトクロームP450モノオキシゲナーゼについて、 除草剤などの代謝に係わる分子種を選定してそれら遺伝子をジャガイモ、イネなどに導入することにより、 除草剤などを代謝してそれらの残留を軽減する品種を作出することができた。

 それらジャガイモ、イネの閉鎖系温室における環境安全性試験をほぼ終了し、現在、非閉鎖系温室隔離圃場での試験を計画中である。
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