Vol.25 No.3 【特集】 生物系廃棄物のリサイクル研究 |
食品廃棄物の現状と食品リサイクル法への対応 |
東京農業大学 牛久保明邦 |
わが国の廃棄物排出量の推移は、経済破綻以後も産業廃棄物及び一般廃棄物は共に微増減を繰り返しながら横這い状況にある。 依然として大量生産、大量消費、大量廃棄の社会経済活動や生活様式が定着し、廃棄物の発生抑制に歯止めが効いていない現状にある。 一般廃棄物の排出量の約30%を占める食品廃棄物が、再生利用率で約10%に留まっていることから、 「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)が、平成13年5月に施行された。 そこで、食品廃棄物の現状と食品リサイクル法の内容と資源循環型社会構築への対策について考察する。 |
←Vol.25インデックスページに戻る
|
畜産廃棄物のリサイクルの現状と課題 |
(独)農業技術研究機構 畜産草地研究所 羽賀 清典 |
家畜ふん尿は、廃棄物であると同時に資源としての価値を持っているが、資源化リサイクルの過程で新たな二次公害を出さない配慮が大切である。 資源化リサイクルの用途には、肥料利用、エネルギー利用、飼料利用などがある。現状では堆肥化利用が主要な方法となっているが、 良質堆肥の生産と流通に課題を抱えている。エネルギー利用には、鶏ふんボイラーによる給湯利用や、メタン発酵によるバイオガス生産がある。 バイオガス利用に先進的な欧州との比較検討から、エネルギー利用や液肥利用に課題があるが、わが国でもいくつかの事例が稼働し始めている。 |
←Vol.25インデックスページに戻る
|
食品廃棄物の飼料化研究 |
日本大学 阿部 亮 |
現在、国内では都市厨芥を主体とする食品廃棄物を加工処理し、飼料に利用する試みが各地で展開されている。 加工処理法としては乾熱乾燥法、油温脱水法、発酵乾燥法が主に利用され、乾燥製品の豚での飼養試験が実施されている。 乾燥製品の特徴は粗蛋白質含量と粗脂肪含量が高いことである。豚飼養試験の多くは市販養豚用配合飼料の一部を乾燥飼料で代替する方法で実施されているが、 10〜30%の代替では増体量等の成績で配合飼料100%給与区と差のないことが明らかにされている。しかし、 乾燥製品の代替率が高まるにしたがって、枝肉に軟脂がみられ、枝肉の格付け成績が低下するという問題が議論されている。 その原因は、食品廃棄物の不飽和脂肪酸含量の高さに起因する。この問題を克服するために、乾燥製品調整素材の選択と代替率、 さらには豚の肥育ステージに併せた給与法の確立が今後の研究課題となっている。 |
←Vol.25インデックスページに戻る
|
生物系廃棄物の肥料化研究 |
神奈川県農業総合研究所 藤原俊六郎 |
多量に排出されている生物系廃棄物の中には、肥料化や飼料化により有効活用できるものが多く含まれている。 生物系廃棄物とりわけ食品廃棄物は、製品過程で他の資材の混入がなければ、安全であるとともに栄養バランスが優れている。 生物系廃棄物には多様な種類があり、家畜ふんや植物質資材は、それぞれに適した堆肥化方法が確立され、実用化されている。 生ごみを含む食品廃棄物は種類も多く、それぞれに適した処理方法は検討がなされているものの、実用化事例は少ない。 このため、今後、生物系廃棄物の農業利用促進するには、製品の品質の保証、養分調整等の二次加工による高品質化、 微生物機能の導入などによる高機能化が必要である。 |
←Vol.25インデックスページに戻る
|
キリンビールにおけるゼロエミッション研究の現状 |
キリンビール株式会社 平川 光雄 |
ビールの製造工程から発生する仕込み粕は、家畜の飼料として古くから再利用されてきたが、付加価値を高めた他用途開発に取り組み、 1997年滋賀工場に仕込み粕を3つに分画するプラントを導入した。穀皮に富む画分はパルプ代替品として名刺や社内封筒に、 保水性の高い画分はキノコ菌床素材に、高タンパク画分は養魚飼料としている。また高タンパク画分からは潰瘍性大腸炎に効果のある成分を見出し、 2000年に病者用食品として商品化した。加えて、乾燥ビール仕込み粕を利用したキノコの栄養源を開発して商品化、 これによりビール仕込み粕の再資源化の用途が拡大した。ここでは、生物系廃棄物の再利用の観点からキリンビールの研究開発・実用化の取り組みを概説・ 紹介する。 |
←Vol.25インデックスページに戻る
|
北海道における乳牛糞尿バイオガスプラント −その現状と研究課題− |
(独)北海道開発土木研究所 石渡 輝夫 |
北海道ではここ1,2年間に16施設の家畜糞尿用のバイオガスプラントが稼働あるいは計画されている。 そこで、これらの施設が普及しているデンマークやドイツと北海道の立地条件の相違を述べると共に、 「積雪寒冷地における環境・資源循環プロジェクト」として筆者らが関係しているバイオガスプラントでの1年余の調査結果と今後の試験研究課題を述べる。 北海道では冬季の糞尿凍結対策と稼働技術、共同利用施設の場合は特に糞尿の搬入・搬出体制、飼養形態(敷き料の混入した糞尿)が大きな課題であり、 一方、発生するバイオガスエネルギーの有効利用が施設の効用面からの課題と考えられる。 |
←Vol.25インデックスページに戻る
|