Vol.24 No.5
【特 集】 植物アレルギー制御研究の進展


食物アレルギー研究をめぐる話題 −進歩と展望−
上野川 修一
 食物アレルギーの研究、進歩及び展望を、特に筆者が興味をもった話題を中心に述べた。その内容は食物アレルゲンの同定法にはじまり、エピトープ、 アレルギーマーチの食物アレルギー研究に及ぼした影響、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎をめぐる小児科と皮膚科の論争、腸管免疫系とアレルギーとの関連、 免疫抑制現象である経口免疫寛容、将来大いに期待されているアレルギーモデル動物と遺伝子、アレルギー予防に期待される腸内フローラとアレルギーなどについて、 特に筆者の私見を中心に述べた。
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腸管免疫系における食品アレルゲンの認識
伊勢  渉
 食品アレルゲンを最初に認識するのは腸管免疫系であり、腸管は全身免疫系とは異なる腸管付属リンパ装置(GALT)を備えている。GALTはパイエル板、 粘膜固有層、腸管上皮内リンパ球などから構成されている。腸管腔に存在する抗原は、M細胞を介してパイエル板に取り込まれ、GALTに特有の抗原提示細胞、 T細胞により腸管免疫応答が誘導される。経口抗原は全身免疫系を負に制御するが(経口免疫寛容)、逆に全身免疫系を活性化することもありIgE抗体産生が誘導されると食品アレルギーが発症する。 近年、経口抗原によりIgE抗体産生が誘導される動物実験系が確立されつつあり、食品アレルギーの発症機構の解明が期待される。
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食物のアレルゲン性:アレルゲンの検出法とその特徴
河野 陽一
 食物アレルギーの免疫学的な機序としては、IgE抗体による液性免疫と遅延型過敏反応など細胞性免疫の両者が関与していると考えられるが、 主にIgE抗体を指標にアレルゲンの検出が行われている。食物アレルゲンを検出する方法は、in vitro検査とin vivo検査に分けられ、 in vitro検査としては患者血清中のアレルゲン特異的IgE抗体を検出するCAP RASTなどアレルゲンを固相とした検査法が用いられている。 in vivo検査としては、患者の皮膚に食物アレルゲンを与えて反応をみる皮膚試験と試験食物を経口的に摂取させて症状の発現を確認する食物負荷試験がある。 現在、食物アレルギー診断と原因食物の確定には、食物負荷試験が最も信頼性が高い。
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経口免疫寛容誘導のしくみと利用
水町 功子・栗崎 純一
 経口的に摂取された抗原に対し免疫応答が抑制される経口免疫寛容の誘導機序として、抑制性サイトカインを産生する調節性T細胞によるアクティブサプレッション、 T細胞の不応答化及びクローン消失が提唱されている。最近、この現象を利用して各種免疫疾患の予防・治療が試みられるようになり、 ある種の自己免疫疾患やアレルギーに対する臨床効果も報告されつつある。一方、食物に対する過剰な免疫応答による食物アレルギーでは、 経口免疫寛容機構に何らかの異常をきたしていると考えられる。したがって、経口免疫寛容機構の解明と効率的な経口免疫寛容誘導方法の開発が、 食物除去や薬物による対症療法とは異なる積極的な食物アレルギーの予防、治療に繋がると期待される。
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アレルギー疾患、特に気管支喘息とスギ花粉症の予防について
木谷 誠一
 あらゆるアレルギー疾患は、あらゆる年齢層で、近年増加している。気管支喘息の危険因子として、遺伝因子、環境因子、寄与因子、喘息増悪因子と多様であり、 かつ多段階の病態生理も経る。そのため、気管支喘息の予防法も、一般感染症と異なり、多岐に亘る。一次予防として、早期介入の提唱、 標準的な予防としてアレルゲン回避の方法、文明論を巻き込む食生活の見直し、より完治をめざす特異的減感作療法、二次予防として抗アレルギー薬による予防的薬物療法、 予防維持法として吸入ステロイドのレギュラーユースがある。ピークフローや喘息日誌による症状の自己認知によるセルフコントロールの強化、 健康教育もさらに望まれる所である。ここでは、特に、喘息死の危険をはらむ気管支喘息と国民病となったスギ花粉症について概説した。
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